今年のハイライトは、やはり年始に訪れた南アフリカ。
日本を出て28時間後に到着したアフリカ大陸最南端。そんな長旅を人生で経験することになるなんて、思いもしなかったことです。
「アフリカに行く」なんて、それだけで大ごと。
そこで出会ったのは、言葉を尽くしても伝えることが難しい圧倒的な自然。
そんな風景の中に溶け込むように、自由にワインを楽しむ人々。
醸造シーズン真っただ中のワイナリーには、
アメリカ、イタリア、フランスからワイン造りを学びに来る若者たちが集います。
将来ワイナリーで働くことを夢見る彼らの情熱に触れられたことも大きな宝物。
彼らの議論の中に入れてもらって、平日はワインセラーで共に働き、休日はワイナリー巡り。
想いをすぐ行動に移す彼らの熱量は、「世界の中の日本」への危機感を知る機会でもありました。
人種も話す言葉も生活習慣や食事も違う国に、これほど長期滞在したのは初めての経験でした。
そこで見つけたのは、伝えたいことがあふれる自分と、それを伝える技量を持たない自分。
何者でもないことを痛感した、久しぶりの経験でした。
そのバランスの悪さが情けなくて、帰国してからの具体的な課題となって今の私を動かしています。
そして、ワイナリーでの経験と共に「南アフリカ」という国を通して感じた様々な感情。
南アフリカで思いをめぐらせたこれらの事象は、強烈な印象となって残っています。
水使用を制限される人々がいる一方で、水を毎日大量に使用するワイナリーでの仕事。
華々しい豪華なワイナリーのすぐ隣には、”タウンシップ”と呼ばれる黒人限定の隔離された居住区があり、
そのギャップには違和感を持たずにはいられませでした。
大量のCO2を排出しながら海外からワインを輸入し、それを商売とするわたしの仕事。
グレタ・トゥーンべリさんの声に賛同し、世界中の若者が環境保護を訴えるデモ行進をしている光景を見るにつけ、
もっと明確に持たなければならない「意識」について、考えるだけではいけない時限に来ているように思います。
自分の仕事は誰かの悲しみにつながっている可能性があること。
今までは想像の領域を出なかったこの可能性を、現実に突き付けられた経験でした。
日本で経済活動する以上、このサイクルから逃げることはできません。
しかし、だからといって自給自足の生活を選択するのも極論すぎます。
具体的な解決策や何をすべきなのか、未だ私は答えを持ち合わせていませんが、
今まで以上に謙虚さをもって仕事をする自分でありたいと思っています。
でも。ワインは共通言語を持たなくてもつながれるとても豊かな飲み物です。
ワインだから出来ることが、何か明るい未来につながるような、そんな気もしていて・・・。
失望するばっかりじゃないんじゃないかなって、楽観的な私が顔を出します。